カエル・イモリ・サンショウウオなどの両生類

を飼育している方および

ペット用の両生類を取り扱っている方へ

 

  ツボカビはいったん野外で蔓延すると取り返しがつきませんが、飼育下あるいは流通途中で発症がみられた場合には、様々な対応手段があります。適切な対処をおこなって飼育動物の命を守ると同時に、自然界への拡散を防止しましょう。

 

飼育における基本原則

    新しい動物を導入する場合には、ツボカビ感染の疑いのない動物を導入しましょう。

疑わしい動物は絶対に購入してはいけません。

    ブリーダーは繁殖施設内へのツボカビ侵入を防止する努力をしてください。

    飼育排水の処理に注意してください(必ず消毒してから捨ててください)。

    廃棄物(床敷・植栽・食べ残しの餌・動物が死亡して不要になった飼育ケージや器具など)および遺体の処理に注意してください。

    死体の取扱や処分も細心の注意が必要です。むやみに移動しない。密封すること。処分する場合は焼却処理とし、土中に埋めてはいけません。ツボカビと確定診断されていない原因不明の死体でも処理方法は同様です。

    両生類を飼育している人は、屋外に出かけて両生類の観察をする際には、自宅からツボカビを持ち出さないように装備や手指の消毒にも留意してください。

    ツボカビ対策の資料が用意されています。かならず全文に目をとおし、十分に理解してください。仮にも両生類を愛好し飼育しようという人において最も重要な知識のひとつだと思ってください。

 

ツボカビの検査が受けられます。

一般飼育家の方へ  一般飼育家からの検査依頼は無料です。

 検査を無料で受けられるカエルは次のとおりです。

 1.ツボカビ感染を疑うカエル※

 2.ツボカビ感染を疑うカエルと一緒に飼われていたカエル

 3.ツボカビ症のカエルと一緒に飼われていたカエル

※ ツボカビ感染を疑うカエルとは、ツボカビ症解説書に書かれている症状を示すカエルは、もちろんのこと。いつもとカエルの様子が違うと感じたら(おかしいと思ったら)、近くの獣医師に相談してください。

・注意

1)検査:検査を受けて陰性と診断された後でも、異常を感じたら、相談してください。検査は、検査を受けたその時、検査用材料をとった部分にツボカビがいないということを示しています。

2)飼い主の方へのお願い:検査依頼書の作成にご協力ください。

3)アフリカツメガエル:この種類のカエルについては、別の検査法を検討しています。

もし、この種類のカエルに異常が見られたら、v-path@azabu-u.ac.jpへ「アフリカツメガエルの検査について」とご連絡ください。

 

検査の受け方の詳細については、各ホームページに掲載されていますので、よく読んで下さい。

 

・業者の方へ

業者の商品については安全性を保証(品質保証)するための検査は受け付けません。ただし、異常個体が見つかれば、検査を無料で行います。

 

ツボカビ検査の受付先は・・。

  現在、全国にツボカビ対策に熟知した一般開業獣医師(動物病院の獣医)が配置されています。これらの動物病院は、爬虫類と両生類の臨床と病理のための研究会・エキゾチックペット研究会・野生動物救護獣医師会といった獣医師グループの中から募られた有志で、各都道府県を網羅すべくネットワークを拡大中です。これらの有志の動物病院は、ツボカビ対策コア獣医師と仮称されています。一覧は別紙資料を参照ください。

もし 皆さんのお近くにコア獣医師がいない場合、まずは最寄りの動物病院に相談してください。最寄りの動物病院の獣医師がツボカビの実情をご存知ない場合もありますが、コア獣医師のリストを示して、連絡をとりあって対処方法を聞くように依頼してください。コア獣医師から最寄りの獣医師に対して、対策情報の資料が送られます。さらに電話相談などもおこなわれ、最寄りの獣医師もあなたの動物に対応できるようになります。(注:日本獣医師会などを通じて広く全ての開業獣医師にツボカビの問題は通知される予定です。従って、最寄りの獣医師の大半がみなさんからツボカビの相談を受けた場合、コア獣医師に連絡をとれるようになっているはずです)

   疑わしい動物が、不適切な方法で移動したり、中途半端な治療を受けることによって、ツボカビ症の拡散へと事態の悪化が加速します。獣医師にかかるときは、必ずコア獣医師に直接か、コア獣医師と連絡のとれる最寄りの獣医師に対応してもらいましょう。

   検査の結果、ツボカビ感染が確認された場合にはコア獣医師の指導に従って、緊急対処を行ってください。

   ブリーダーさんの場合には動物の殺処分と施設の完全消毒。さらには種親の総入れ替えが必要となります。しかし、個人の愛好家の方の場合、思い入れのある大切な動物を殺処分するのが忍びないという場合もあると思います。この場合、治療しながら飼育するという道もありますので、検査を受けること自体を怖がらないでください。

 

いまからできる、ツボカビ対策に有効な衛生管理

ヒョウモントカゲモドキのクリプトスポリジウムとは異なり、ツボカビは消毒薬で殺すことができます。適切な消毒薬を用いることによって、飼育施設の衛生を保つことができます。とくに感染動物を治療しながら継続飼育する場合には消毒を厳重に行い、外部へのツボカビ拡散を防止しなければなりません。

現在までに複数の消毒薬がツボカビに有効であると紹介されています。

   ここでは、一般の飼育者やブリーダーの皆さんが入手しやすく、安全性が高い消毒薬をひとつだけ紹介しておきます。

製品名:アンテック ビルコンS

輸入販売元:バイエル株式会社 動物用薬品事業部

有効成分名:ペルオキソ一硫化カリウム・塩化ナトリウム

購入方法:インターネットでビルコンSを検索しネット販売先をみつけてアクセス

 

概要 54 種類のウイルス、 384 種類の細菌、 96 種類の真菌類、 6 種類の芽胞菌に対して効力が確認されている。海外でのツボカビ対策において、車両のタイヤなどの消毒に推奨されている。安全性が高く、ウサギの眼球滴下試験において刺激が無く、ラットの内服試験において毒性が無いことが証明されている。

   両生類の薬浴に使用できるかどうかは未判定であるため、現時点では推奨できませんが、現在独自に実験中です。効果と安全性が証明されましたら、改めて、薬浴に用いる場合の方法をご紹介します。

 

実際の消毒手順

まず、手指や器具を消毒するために洗面器などに消毒薬を満たします。

   次に飼育容器を同じ規格で2個用意し、新しい容器に動物だけを移動させます。

   移動に用いたアミや手指を消毒液のはいった洗面器につけて消毒します。

   動物の入っていた容器の消毒にとりかかります。

   まず、飼育水をそのまま下水に流してはいけません。

   動物の入っていた容器に、消毒薬を投入し、しばらく放置し飼育水を消毒します。

   容器の周辺も消毒液のはいったスプレーで噴霧します。

   消毒のおわった飼育容器をきれいに洗浄したあと乾燥し、次回の清掃に備えます。

   なお、上記の消毒は疑わしい動物あるいは感染動物についての衛生管理であって、汚染されていない動物は通常の管理で問題ありません。

   ただし、怪しくない動物たちであっても世話は個別に行い、清掃用具・飼育器具の未消毒での使いまわしはやめましょう。残り餌の使いまわしも大変危険です(食べ残しは焼却処分)。世話をした手指または手袋も必ず消毒してから次の動物を扱いましょう。

   濾過装置や水草を設置したアクアリウムで飼育している中に怪しい動物が出た場合は、先に示したようなベアタンク・全換水方式の飼育にきりかえ、消毒を実践するか(水草は焼却処分・器具一式は消毒)、部分換水の際の排水を確実にバケツにうけとめ、それを消毒してから排水するようにしてください。

   個人の飼育家の方で、上記の消毒作業を実践できない場合は、感染動物の殺処分を強くおすすめします。

 

検疫

   新しい動物を導入する場合、まずは、ツボカビ感染の疑いのない動物を選んで

   購入することが大前提ですが、同時に検疫期間を設けることを薦めます。

1:導入する新規動物はツボカビの検査を行ないます。検査のタイミングは検疫の最終日近くが良いでしょう。

2:検疫期間は60日で、その間、隔離飼育を行います。隔離飼育中の取扱は、感染動物と同様の消毒作業を伴います(上記 消毒薬の使い方参照のこと)。

3:飼育温度は1723℃が望ましい(特殊な選好温度を要する種はこの限りでありません)

4:検疫中の動物の世話は、全飼育動物の中では、一番最後に行ないます。(検疫中の動物が、汚染されていた場合、今まで飼育していた動物にツボカビが蔓延してしまうからです)

5:世話をする手は、使い捨てゴム手袋の使用が望ましいところですが、検疫動物を置く部屋の出入り口においた消毒薬入り洗面器につけこんで消毒することでも対応可能です。

 

ツボカビに感染した両生類の治療について

大切なペットが不幸にしてツボカビに感染していると診断されてしまった場合、治療を受けることができます。

ただし、治療をする場合には、先に述べた感染動物の個別管理と消毒を徹底できる場合に限られます。飼育水を消毒もせずに下水に流しながら世話をするようでは、感染動物を延命することはできません。

  治療方法は、コア獣医師のもとに配布されている資料にいくつかの方法が紹介されています。コア獣医師と最寄りの獣医師との連携によって治療を受けるようにしてください。観賞魚の治療薬などを使用しても完全な効果は得られませんので、事態の悪化を招く恐れのある独自の治療はしないようにしてください。

なお、ブリーダーの方の飼育施設で感染が確認された場合、オールイン・オールアウトといって動物の一斉総入れ替えが理想的です。特殊な品種など生存を強く希望される種親の場合は、消毒管理を徹底した隔離環境下で治療を行い、生き延びた後も継続的に検査をつづけて安全を確認しなければなりません。

   治療効果が上がった動物を種親として繁殖した場合、販売前に動物の検査もより厳密に行なう必要があります。

 

末尾に重要なことを2点

野外観察について

   両生類飼育愛好家がフィールドワーカーである。

   ハープタイルホビーの世界ではごく普通のことです。両生類の愛好家は産卵期などにフィールドに出かけて野生の動物を観察することが多いですが、分散していた動物群が一箇所に集まって水にはいる繁殖期こそ、ツボカビ蔓延にとって、いちばん危険なタイミングです。

   この時期に観察に出かける場合、家で飼育している動物たちが感染していないことはもとより、フィールドに入る際にカビを持ち込まないように最大限の注意を払ってください。

   上記の消毒薬の使い方を熟知して装備や履物、フィールドに乗り込む車両のタイヤの消毒などにフルに活用してください。

 

飼育家の振る舞いが最も重要です

現在、わが国では飼育環境でしか、ツボカビが確認されていません。

  それはすなわち飼育愛好家やブリーダーの方たちの努力のいかんによって、ツボカビが封じ込められるか、野外へ蔓延して日本の両生類が根絶してしまうかの成否がかかっているということです。ツボカビの侵入防止と拡散防止を念頭にした衛生管理はこれからの時代の両生類飼育の常識となります。感染動物や怪しい動物の譲渡やネットオークションへの出品は厳禁です(器具のリサイクル販売もやめましょう)。

  両生類を愛する皆さんひとりひとりが 真剣にツボカビ対策に取り組んで、わが国特有の豊かな両生類タクソンを守ってくださることをお願い申し上げます。

(文責:石橋徹